Active Careのススメ

アクティブケアとは

前書き

私は1992年に渡米し、その後16年間米国でスポーツ医学とリハビリテーション、そしてカイロプラクティックを学びました。

小学2年時からサッカーを始め、長い間、サッカーをすることで身を立てるつもりでいました。しかし高校2年の時に膝を痛め、その時に診て頂いた医師に‘もうあなたの膝は治らないので、サッカーは止めた方が良い’と言われ全てを奪われてしまったかのように思い、悩み、葛藤していました。高校卒業後、世はバブル景気に沸いておりバイトでも十分食べて行けたので、家を飛び出し、アメリカに行く費用を貯め、ただなんとなくアメリカに行きました。大した目標もなくただ何となく。 

英語学校を無事卒業し、二年制の大学に入学した時、クラブでサッカーをやる機会がありました。その時に私よりも酷い膝の怪我を負った選手が普通にサッカーをしていたのです。 

これは衝撃的でした。 

なぜ私は外側半月板を損傷しただけで、サッカーを止めろと言われたのに、この彼は靭帯を3本断裂、内側半月板損傷をしていたのに普通にサッカーをしているのか? 

疑問でした。日本の医療とアメリカの医療に違いがあるのか? 

一体なにが違うのか? 

まだインターネットもない時代に、時間をかけて調べました。 

すると、日本の医療は手術件数も技術も世界に引けをとらないレベルであることがわかりました。では何故あの時あの医師は私に死刑宣告とも言えることを言ったのか。 

調べていくと日本の医療とアメリカの医療の大きな違いは‘リハビリテーション’にありました。 

日本は戦前から細胞医療とも言われるドイツ式医療を行っていました。ひと昔前のお医者さんのカルテがドイツ語で書かれていたのはその為なんです。

臓器や傷害がある部位を丹念に調べあげ、画像上や検査上ノーマルではない部分に手術、切除、移植、投薬などを行うことで‘ノーマル’の状態に近づけること、いわゆる対症療法と受動的医療を主たるものとしていました。言い換えれば医師は切って貼ったらその後のリハビリはほとんどなく、患者は治ったものだと考えていたのです。日本とアメリカの医療での決定的な違いは、リハビリそのものにあったのです。 

その後、私は私のような思いをする患者さんを一人でも減らしたいという思いから、リハビリを学びました。 

4年制の大学を卒業後、NATAアスレティックトレーナーの国家資格を取得し、近所の高校で働いていました。アメリカにおいて未成年に対する医療従事者のアプローチには多くの制限があり、練習後にアイシングをしてもらうこと位しか、特にすることもなく、自分の力のなさを痛感しました。そのこともあり、私は自分の手で患者さんの手助けをしたいという思いから、徒手療法としては最高峰であるカイロプラクティックのドクターを目指しました。 

幸運にも2002年にロサンゼルスドジャースでトレーナーとして働く機会に恵まれ、その後、様々なトップアスリートやオリンピック選手と仕事をさせていただきました。彼らの多くは当然のようにモチベーションが高く、私のアドバイスに耳を傾け、実行していくことでパフォーマンスや結果そのものの向上をみることができました。

しかし、一般の患者さんはこれとは大きく異なることを私はロサンゼルスで開業した時に身をもって知りました。 

そこで私が重要視したのが、従来の受動的医療だけではなく、患者さんが自分のために何かを能動的に行うアクティブケアといわれるものでした。 

 

この本を通じて、私が20年近く臨床を行ってきて得たものを、少しでもこれからの医療従事者やカイロプラクターに伝えることができることを、それとともに多くの患者さんがアクティブケアの重要性、予防の大切さを認識していただければ、こんなにもうれしいことはありません。 

 

2016年12月吉日 

(株)トータルリハビリテーション

代表 友広 隆行